アフターコロナの海外旅行

 

 

はじめに

「アフターコロナの海外旅行」と題したものの、この記事を執筆中の2022年7月29日現在、国内感染者数は過去最高レベルとなり相変わらずこの感染症の収束の見込みは立っていない。が、現段階では未だに国又は地方自治体からの行動制限要請は出ておらず、3年ぶりの行動制限のない夏休み期間ということは確かだ。

コロナ禍以前の私は、大体二ヶ月に一度のペースで海外(主に香港)へ写真を撮りに出かけていた。主にバックパッカー以上パッケージツアー旅行者未満というスタイルでの一人旅が多く、国際線ターミナルの独特な喧騒、異国の地を歩いて土地勘を身につけることが大好きだった。コロナ禍となり、実質的に海外旅行に行けなくなってからも、流行の間隙を縫って何度か国内旅行に出かけることこそあったが、心のどこかではやはり物足りなさも感じていた。そして迫りくるマイルの有効期限に脅えていた。

その後2022年になり、コロナの流行がある程度落ち着いたかのように見えた頃、旅行目的での海外渡航の日本帰国の際のハードルが大幅に下がり、また観光客の入国についての要件が緩和された国々の数が大きく増えた。特に具合的なプランは何もなかったが、今後何がどうなるか分からない。ひとまず今年の夏は海外旅行へ行こうと決め、瀕死のマイルで取れる航空券を探し、ちょうど良く空きのあったタイへ3年ぶりへ行くこととなった。本当はgoogleマップと乗換検索を使わないでも大体の場所へ行けるぐらい馴染んだ香港へ行きたかったのだが、現段階では香港(中国)は隔離なしで入国はできず断念した。いつかまたふらっと茶餐廳に行ける日々がくるといいのだけれど…

2022年7月18日 羽田空港第3ターミナル(旧国際線ターミナル

 

入国まで

タイへ行くのは今回で3度目である。1度目は4年前に珍しく友人と、主にバンコク近郊へ。2度目は2019年の11月に、マイル利用でベトナムシンガポールを旅行した際最後に立ち寄った。確かあの時はまだスワンナプーム-関空でタイ航空のA380が飛んでおり、是非とも乗ってみたいと思って復路の東京着の前に伊丹羽田乗り継ぎを入れ特典ビジネスで航空券を取ったのだが、復路便の機材トラブルによりそのまま747の羽田直行便に振り替えられてしまった。また次回乗ればいいやとその時は思ったものだったが、まさかそれから数ヶ月で世界がこんなにも変わるとは、本当に世の中何が起こるか分かったものではない。タイ航空も破綻してしまったし。

現在、日本から隔離なしで入国できる国はかなり増えており、候補は何ヶ国かあったが、目的地をタイへ決めた理由は以下の通りである。1.過去に行ったことがありある程度の土地勘がある。2.バンコク市内は公共交通機関やgrabで大変移動の便が良く何かあった際に対応しやすい。3.駐在、旅行者含め現地に日本人が多い。4.特典ビジネス利用なので6時間ぐらいは飛行機に乗っていたかったから。

さて、2022年7月現在のタイ入国に関する条件だが、こちらはほぼコロナ前に戻ったと言ってもいいぐらい規制がない。私が渡航を検討していた2022年5月の時点では、1万ドル以上のコロナ治療対応の医療保険への加入を義務付けるタイランドパスの申請が必須であったが、2022年7月よりそれは撤廃された。ワクチン未接種者の場合、渡航72時間前までの陰性証明書を準備する必要があるが、ワクチンを2回以上接種している場合は渡航に必要となるのはこれまで通りの航空券、パスポート、それに接種証明書、基本的には以上となる。ワクチンの接種証明書に関しては、私の場合スマホの万が一が怖かったので自治体発行の紙の証明書も持っていっていたが、実際の手続きは全て厚労省のワクチン接種証明書アプリで事足りた。他の旅行者のブログ等を見ると、入国審査前などにもチェックがある場合もあるとのことだったのでその想定で準備をしていたが、私の時には出発時のチェックインカウンターでの提示以外は特に求められなかった。入国審査に関しても、特に特殊な質問はなく、これまで通り滞在日数や旅行目的を聞かれる程度であとは指紋のアレに手をペタっとすればOKであった。顔確認の為にマスクを外すこともお忘れなく。

余談だが、旧タイランドパス取得で最も戸惑うと言われていた1万ドル以上の医療保険加入義務については、私の場合クレジットカード付帯のものを使おうと考えていた。普段はあまりクレジットカードの付帯保険の保険証書など気にすることはないと思うが、コロナ以降入国時にこれを求められる国はそこそこ多いらしく、カード発行会社経由で頼むと1週間程度で何の問題もなく紙を送ってくれた。ただし、これらの保険については、カードを所持しているだけで付帯する自動付帯と、航空券やホテル代など旅の主要な決済を当該カードで行わないと保険の対象とならない利用付帯のパターンがあるため、これを機会に確認しておくことをおすすめする。当初私は最も補償額が大きかったサブのカードの保険を利用しようと考えていたが、約款をよくよく読むとこちらの保険は利用付帯でマイル特典を使った今回のようなケースだと保険の適用外になってしまっていた。2022年7月現在、上述の通りタイ入国に関しては保険加入が義務ではなくなったが、万が一海外で医療機関を利用するとなると割とバカにならない額がかかる上に、コロナのせいで以前よりもそのリスクが高い現在では義務ではないがそれなりの額を負担してくれる保険への加入を考えておくことをおすすめする。

今回のフライトは、往路はタイ航空TG683、復路はANAのNH848にしてみた。破綻後のタイ航空のサービス内容がどうなっているのかが気になったのも理由の一つだったが、往復共にANAにするよりタイ航空を入れた方が燃油サーチャージが少し安くなるのが大きな理由だった。現在、燃油サーチャージが本当に高い。これでZIP AIRのフラットシート乗れちゃうじゃん!ってぐらいの高さである。近々、ヨーロッパ方面のロングフライトもしたいのだけど、今の燃油サーチャージを見ているとちょっとバカバカしく感じられてしまう。コロナ以前に海外へ良く行っていた方は、試しに適当な航空券を検索して燃油サーチャージを確認してみると良い。飛ぶぞ。飛行機だけに。

 

久しぶりのバンコク

時系列は崩れるが、久しぶりの海外旅行は出発前からドタバタであった。恐らく年に数回も海外へ行く方は既に染み付いていると思われる自分なりの海外旅行セット一式、例えばその国の電源ってどの形だっけ、とか海外でのスマホの通信手段の確保とか、持ち物以外にも心構え的な諸々、それがたったの3年で割と色々忘れていてそんな自分が結構ショックであった。私は現地SIMより海外ローミング派、両替よりクレジットカードの海外キャッシング派だったのだが、思わずそれぞれの手続きをしっかりと復習してしまった。海外ATM利用時のレート誘導とか「あったなーそんなの」と変に感心してしまった。

件の往路のTG683内でのサービスは概ね破綻前とそんなに違いはなかったように感じた。トイレにお花(物理)が飾ってなかったり、機内食の紙メニューがなくなっていて口頭の説明だったり、機内エンタメの日本語字幕のある映画がめちゃくちゃ少なかったり、まぁそんなもんかと思う程度。機内は国内線同様、食事以外はマスク着用推奨だけど、私の場合は体質的に喉が雑魚なので、コロナ以前から機内マスクはしていた為違和感はなし。着陸後、機外へと出ると海外特有の日本とは違う"匂い"に懐かしさを覚える。往時よりは人が少ないせいか少し匂いは弱く感じたけど、それでも懐かしいものは懐かしい。海外旅行の好きな瞬間のひとつだ。空港到着後は、相変わらずプライオリティレーンの場所が分からず通常の入国審査列へと並んだ。スワンナプームは毎回毎回プライオリティレーンを使える立場で入りながらも場所が良く分からず結局通常レーンに並んでしまうが今回もそうだった。大行列が名物の入国審査だがさすがに時期が時期だからかそこまで混んではいなかった。が、ガラガラと言うほどではなく10分少々待つ程度。周囲を見渡すと日本人はそこまで多くない様子。3年前までは当たり前だった、仏頂面の職員にハンコを押してもらう行為が妙に嬉しく思えた。

荷物を回収して、ATMでお金を下ろし、1FのMAGIC Food Pointへ。1000バーツ単位でキャッシングする私は毎回ここで100バーツ分のフードチケットを買ってお金を崩す。値段も安いし、ここのタイフードは空港内では一番ローカル美味しくてお気に入りだ。食事をしながらgrabのカード情報を更新して(サービス外の日本だとこの作業ができない)、3年前と少々変わったインターフェイスにやや苦戦しながらもARLへ。マッカサン駅でgrabを呼び、宿のあるナナ近辺まで移動した。2022年7月の段階では、既にバンコクでは屋外でのマスク着用義務は撤廃されたと聞いていたが、見た感じ現地の方は大体屋外移動時でもしている感じだった。運転手、ホテルスタッフはもちろん、屋台のおっちゃんおばちゃんも。暑いのにみんなすごい。パッと見た感じ欧米人は基本的にしていない人が多かったイメージ。夕食後、近くのスーパーへと行くついでにナナプラザを眺めてきた。そもそも私はゴーゴーバーには興味がないMP派なので外観を見るのも初めてだったが、さすがに中は盛り上がっているようだった。ただ、入場ゲート付近ではちゃんと検温消毒を行っていて、そこそこちゃんとしているようだった。あとナナプラザの向かいってフーターズなのね。初めて知った。面白い。

パッと見は3年前とあまり変わっていないように見えたバンコクだったが、ラチャダー鉄道市場はじめ、3年前の段階で割と人気スポットとして紹介されていたナイトマーケット関係は結構閉業してしまっているところがあるらしい。この辺は、ネットの情報を調べても最新情報に更新されている観光系のサイトが少ないことから近々行こうと思ってる人は注意が必要かもしれない。あとは西への延伸でめちゃくちゃ便利になったMRTが、シンガポールみたいにVISAのタッチ決済で改札通過できるようになっていた。海外だとお札はともかくコインの金額が分かりにくいのでこれは本当に助かる。めちゃ便利。

 

現地でのPCR検査

さて、以上のように現在のタイへの旅行はワクチン接種者にとってはさほど難しくない。恐らく2022年7月の段階において、海外旅行、特に個人旅行者のラスボス的存在が現地でのPCR検査だろう。後述するMySOSのアプリなどの手続きで帰国後の検疫は大分スムーズになったが、兎にも角にも日本行きの飛行機に乗るためには現地で陰性証明書を取得しなければならない。厚労省のサイトには以下のような文言が載っている。

全ての入国者(日本人を含む)は、出国前72時間以内に検査を受け、医療機関等により発行された陰性の検査証明書を入国時に、検疫所へ提示しなければなりません。
有効な検査証明書を提示できない方は、検疫法に基づき、日本への上陸が認められません。
出発国において搭乗前に検査証明書を所持していない場合には、航空機への搭乗を拒否されます。
検査証明書の取得が困難かつ真にやむを得ない場合には、出発地の在外公館にご相談ください。

とにかく日本に入国する際にはPCR検査受けて陰性もらってこいよーというお話である。こればかりは例外がない。さすがに今までの海外旅行でこのような経験はなかったので「バンコク 帰国 PCR検査」なんかで検索しまくったところ、一つの手段としてはH.I.Sなどの旅行社が送迎、病院の予約等をパッケージにしてくれているプランが見つかった。これは多分結構便利だ。ただ、お値段もそこそこする。で、恐らく最終的にみんなが辿り着いていたようなクリニックがMed Consult Clinicだった。

pattayalife.net

行き方、システム等はこちらのブログを大いに参考にさせて頂いた。

こちらのクリニック、病院内での受診ではなく恐らくPCR検査特化でやっているようで、しかも帰国用の書類が欲しい外国人用に特化している。それでいて通常コースだとお値段1,500バーツ(約5,600円)。予約方法や具体的な手続きは、クリニック名で検索すると様々なブログがヒットするのでお好きなもの参考にすると良いと思う。クレジットカードも問題なく使える。また、私の場合、予約をその日の18時としていたところ16時前には着いてしまったため受付をしてもらえるかどうかが不安だったが、結果的に全く問題なかった。どうもカウンターの中の人の動きを見ていると、当日予約分の人の国籍用の検査結果証明書原本と会計伝票を先に用意しているらしく、日が変わらなければ時間が前後しても問題はなさそうだった。

行き方に関しては恐らく付近のBTSを降りて通りの入り口にいるバイタクを捕まえるのが一番手っ取り早い。私はちょうど検査前にジム・トンプソンのアウトレットストアに行っていたので、その帰りにトンロー駅で下車し付近のバイタクで移動した。流しのバイタクと違って、通りの入り口で固まっているバイタクは料金固定制なので恐らくここへの移動に関してはこれがベスト。ちなみにトンロー駅付近から20バーツだった。相当な数の人を乗せているのか、たむろしている運転手の誰かにgoogleマップを見せてここ行きたいと言えばすぐに理解された。

ちなみに、2022年7月の段階でジム・トンプソンのアウトレットストア、驚くほど物がないです。あそこのコースターとかお菓子とかお土産にちょうど良かったのに最上階のカフェスペースみたいのが閉店中でお菓子類が全然なかった。お土産考えてる方はご注意ください。女性用のポーチとかは相変わらずいっぱいあった。

 

帰国まで

さて、楽しかった旅行もそろそろおしまい。無事に72時間以内の陰性証明書も取得できた。帰りの飛行機へはこれとパスポートをチェックインカウンターで提示すれば搭乗できるが、MySOSという空港検疫の事前登録アプリを使用すると帰国時の手続きがめちゃくちゃスムーズになる。

www.youtube.com

ゆる海外さんのこちらの動画を参考に申請をしました。

2022年7月現在、日本への入国時に必要な書類や手続きは出発地ごとに異なるが、タイは最も簡単な手続きで帰国ができるグループの国になっている。アプリの作りもかなり分かりやすく、陰性の証明結果が出た時点で登録を済ませておくとスムーズだろう。なお、私の場合はワクチン接種証明書はアプリ版のスクリーンショット、陰性証明書はクリニックからのメールに添付されているPDFファイルをアップロードすれば問題なかった。聞くところによると、不明瞭な日付等で書かれた陰性証明書等はエラーが出てしまう場合があるそうなので、滞在中、なるべく早めに手続きをしておくと良いと思う。

手続きがすべて完了すると、タイからの帰国の場合アプリ画面が青になる。降機後は専用の導線が用意されているのでアプリを開いたまま従って歩いていけば良い。

私は羽田着の便だったが、降機後はこんな感じで割と長い距離を歩いて左上の赤丸辺りで職員さんによる確認が行われる感じだった(画像は出発階なのでイメージ)。手続き自体はMySOSの登録さえできてきれば簡単な確認で済むのだけど、物理的な移動距離があったので帰り時間を考える際には、到着時間+1時間ぐらいの余裕をもっておくと良いかもしれない。もし仮にここでMySOSのアプリが上手く使えなかったとしても、書類さえ揃っていれば多少時間が余計にかかるぐらいで済むだろうし、何より日本なので日本語使えればどうとでもなるはず。

これが終われば荷物をピック、税関、退場、のいつもの流れ。お疲れ様でした。

 

おわりに

約3年ぶりの海外旅行。海外自体は何回も行っているのに、コロナ後初めての海外旅行。今までと比べてどのくらい面倒くさくなったかと問われると、正直事前に必要な事項をしっかりと調べられる人ならほとんど面倒くささは感じないであろうレベルだった。それまでにパッケージツアーでしか海外に行ったことがない人がこのタイミングで個人旅行しようとするとやることは多くて面倒くさいかもしれない。でも、主要な国であれば旅行社の代行サービスが整っているはずなので、金はあるけど時間がない系の人はそちらをバンバン活用されると良いかもしれない。

私の場合、体質的に喉が乾燥などで腫れやすく、また平熱も高いため諸々の手続きよりもとにかく体調を崩さないように気を遣いまくっていた。今までは笑えた旅行先での食あたりや疲れて発熱なんかの症状でも飛行機に乗れないリスクが出てくるし、万が一旅先でコロナに罹患してしまったら2週間近く閉じ込められてしまう。なので、手続き上はコロナ以前とほぼ変わりなく行ける国が増えたとは言え踏み抜いたらヤバいリスクが増えたことは間違いない。それでも、久しぶりの海外はやっぱり楽しかったし、大量の写真をLightroomに取り込んで一通り現像を終えた今となっては、早くも次の旅行に行きたくて仕方がない。

最後に、海外旅行のコロナ罹患リスクについてあくまで私見を述べると、社員旅行のような規模で行かない限りは現状の都心で友達と飲み会をするよりもよっぽど低いんじゃないかと勝手に思っている。もちろんこれはその人の旅行先での行動に大きく依存するけども、自分のような一人旅スタイルで所謂夜のお店なんかにも行かずにプラプラ散策して写真を撮り歩くようなら間違いなく低リスクだと思う。英語もタイ語も得意ではないから現地の人や外国人旅行者と盛り上がるほどの会話にもならないし。加えて、ワクチン接種の判断はもちろん人それぞれだけれども、こと海外旅行へ行くことに関しては現段階では2回以上の接種をしておくのが間違いなく良い。これがあるとないとで大分手続きも変わってくるし。

久しぶりに行けたバンコクは相も変わらぬ良いところだった。意外と微笑まない国、タイ。さて、次はどこに行こうか。これから行かれる方、お気をつけていってらっしゃい。